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社長と社員の関係

●ある社長から「社員を総入れ替えしたい」と相談を受けた。全員をクビにして、新しい顔ぶれでやりたいということらしい。

理由を聞くと、会社は昔とても儲かっていたので、その頃に社員を甘やかしてしまった。業績が厳しくなった今も、その気分が抜けきれない古参社員が多くて困っている、と言う。

●私は、少々厳しかったが「血液を入れ替えてもあなたはあなたですよ」とお答えした。

「まず、社員の甘えとは具体的に何でしょうか? そして次に、甘えてしまった古参社員にも変化を要求し続けていけば、かならず変わってくれます。ゲームみたいにリセットしてやり直そうなどと思わない方が良いと思います」

●案の定、この社長はゲーム好きらしいがそれはさておき、続き。

「年配になれば誰でも多少は分別くさくなりますが、人間はいくつになっても変われます。昔甘やかしたことを理由にして、今も社長が甘やかしているのではありませんか?中小企業にとって、会社の問題はすべて社長自身の問題です。社員のせいではありません。甘えてしまった古参社員に妥協せず、真剣に直面しましょう。必ず分かってくれます。ただし、頭では分かってくれても、意識と行動が伴わないという現実問題もあります。その時には、きちんと人事上の処遇として次の対策が必要になるでしょう。まずは手順として、古参社員に期待していることを具体化し、彼らに告げてください。要求し続けてください。必ず何かが始まりますから」

と申し上げた。

●組織はリーダーの力で決まる。決してメンバーの力で決まるものではない。

フランスには 「1頭のライオンに率いられた100匹の羊の群れは、1匹の羊に率いられた100頭のライオンの群れに優る」という諺がある。

イタリアでは、「ゴールを征服したのはシーザーに率いられたローマ人であり、たんなるローマ人ではない」というのもある。

イギリスでは、「組織とは凡庸な人を率いて非凡なことを為すところ」と経済学者が教えており、リーダー次第で組織の盛衰が決まってしまうという教えは古今東西に残されている。

●トップが強いリーダーでなければ、メンバーを入れ替えたところで、何も生まれないと私は思う。

しかし、若干、例外というか特殊事情もある。

●連戦連敗して、特技が「遁走」(とんそう、上手に逃げること)だと言われた三国志の英雄・劉備玄徳(りゅうびげんとく)も、諸葛孔明(しょかつこうめい)に出会ってから連戦連勝するようになった。

天才軍師・孔明に出会う以前から劉備には、関羽や張飛といった創業時からの猛将がいた。関羽などは、今でも中国で神とあがめられる人物であり、とにかく強くて骨がある漢(おとこ)だった。そんな部下を劉備は上手に使いこなせなかったわけだ。

●ところが孔明はそんな劉備を変えた。

人間的な魅力に富んだ劉備という人物に、自分の全知全能を賭けてみたいと思わせるものがあった。
おそらく同様の感情は、関羽も張飛も感じていたのだが、劉備の戦略を補うほどの才能は持ち合わせていなかったと言えよう。

孔明の方が関羽や張飛より上という意味ではなく、守備範囲が違うのだと思う。

●あなたは劉備か、孔明か、はたまた関羽や張飛か。

21世紀に入ってすでに10年近く経とうとしているが、かつてのような大量生産・大量販売の時代のリーダーシップ論は使えない。
一人の優れたリーダーがたくさんの勤勉な労働者を上手に使えば勝てるという時代ではなくなったのだ。

額に汗して勤勉に働く単なるワーカーという労働者は日本国内には必要なくなった。世界有数の高賃金国家日本の戦略は、高生産性国家である。それは企業も同様のはず。

●そのためには、一人一人の社員が頭脳をもった知識労働者(ホワイトカラー)でなければならない。
だから、理想のリーダー像は、大組織を作った昭和のカリスマリーダーではなく、個人も会社も「君子豹変」できるスモールビジネスを作ったリーダー達に切り替えていかなければならないだろう。