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徒手空拳

★「徒手空拳」…自分の力以外で頼れるのは何もないという状態。
「徒手」「空拳」ともに、手に何も持たないという意味。

●私の友人のS社長(45)は、18才の時「徒手空拳」でニューヨークに渡った。日本の高校を卒業し、父の人脈をたどってここまできた。
日本人レストラン王として大成功していたR氏の自宅に居候し、そのチェーン店で働くことになったのだ。いつかR氏のようなレストラン王になって、五番街を日の丸だらけのオープンカーでパレードしてやると、ヤマト魂旺盛な18才だった。

●だが、現実はきびしかった。
このレストラン王の白人奥さんにひどい差別を受けた。ご主人が不在なのをよいことに、人間扱いされなかった。かなり我慢した。
でも日本人であることを侮蔑されたとき、口答えしてしまい家にいられなくなった。アパートで単身生活を始めたが、今度は引っ越し先が悪かったのか、不良グループに連日のように銃口を突きつけられた。

●彼はそうしたどん底の生活を味わいながらも、いつかこれがエピソードになると思っていた。

その後S社長は言うに尽くせぬ経験をしたのだが、長くなるので割愛。
今、西海岸で旅行会社を経営し、マカオやタイで不動産会社と旅行会社をもつ大資産家オーナーになった。

●「がんばれ社長!」のメルマガがきっかけで都内でお会いし、意気投合した。その後、アメリカ、チンタオ、常州、タイ、香港、マカオ、沖縄、屋久島、秋田、山梨、山口、鹿児島、名古屋、福岡、愛媛、青森、阿波踊りなどいたるところにご一緒した。

●S社長は子供のように好奇心が旺盛で、観光名所をまわるだけでは満足しない。その奥にある現地の人の生活を感じてみたいタイプだ。
それでいて、とても臆病でもある。
中国で寿司屋に入ると、一貫ずつ臭いを確かめる。少しでも異臭がしたら食べない。中華料理店では火の通り具合を確認するし、バーへ入れば飲む前に念入りに料金システムをチェックする。
決してイケイケドンドンのタイプではない。

●だが彼は「徒手空拳」を好むという性癖があるようで、軌道に乗ってしまった西海岸のビジネスはスタッフに任せっきり。一年に一度くらいしか現地に顔をださない。メールとブログがあるから何も問題ないらしい。

●そんなことより、「徒手空拳」が好きでギリギリの資金で、ギリギリの生活をし、時には携帯電話やノートパソコン、パスポートまでをもスリに盗られ、命からがらのインディージョーンズのような冒険をしながら会社を興し、軌道にのせていくのが大好きなのだ。

だからいつも単身外国独り暮らしをしている。リッチなライフスタイルは好まない。

●そんなS社長のことを思いだしていたら、ユニクロの柳井会長も野菜事業の失敗をこう反省しておられたことを思いだした。

「野菜ビジネスは、カネがあり人材もいたから、うまくいかなかった。カネがない、ヒトがいない、モノがない、チャンスがないことは、事業を成功させる4大条件だと僕は思っています」

「徒手空拳」が成功へのもっとも近道かもしれないと思う。