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スタバミーティング

●「がんばれ社長!経営ゼミナール」に参加し、自社の経営マニフェストを作り上げた名古屋の花坂社長(40才、仮名)。

彼は昨年、父から株式会社花坂商会(仮名)の社長を継いだ。5年前に入社して以来、じっとあたためてきたアイデアを一気にぶつける時がやってきた。
そこで「がんばれ社長!」の経営ゼミナールに参加し、一気に経営計画を作りあげたのだった。

●今年のメインテーマは「業態確立」。
従来の総合プラモデル店舗を、ラジコンヘリコプター専業店に変える。
これは大冒険だ。
そして、サブテーマが「経営理念を共有できるチーム作り」だという。

●花坂は完成した経営マニフェストを武沢に見てもらおうとアポ電話を入れた。
セミナーでは社交的に思えた武沢が電話では意外にぶっきらぼうだ。
「はい、ごくろうさん。用件は?」と愛想がない。
主旨を話すと、スタバをご馳走することと45分以内に話を終えることを条件に武沢がマニフェストの内容をチェックしてくれるという。

●その日がやってきた。

「武沢先生、今日は貴重なお時間をありがとうございます。ゼミナールでは大変お世話になりました。ここのスターバックスは大きいですね。・・・」

「そんなこといいから、僕は本日のコーヒーのホット、トールサイズで。この席でお待ちするから」
「あっ、はい」

●「やっぱり武沢先生は優しくない。誰かとケンカでもしたのだろうか」と不審に思いながらも、自分用の抹茶フラペチーノと武沢用のコーヒーを持って席につく。

「ところで、これが完成した経営マニフェストです。武沢先生にご覧いただいて何か助言を頂戴できればありがたいのですが」とマニフェストを手渡す。

●「いきなり読んだってよく分からないから、順番に話して聞かせてくれる。質問するからひとつの質問に対して1~2分で話してくれますか?」
「わかりました」
「まず御社の過去から現在までの経緯を聞かせて」
「はい、当社は祖父・洋太郎が40年前の昭和43年に駄菓子店として開業し、それを父の代でプラモデル店に変え・・・」
「終わり?3分30秒かかってるよ、1~2分って言ったよね」
「あ、すいません」

●そこからが本当の地獄だった。武沢の質問は鋭かった。しかも返答は1~2分で済まさねばならない。

・経営マニフェストを作った目的はなに?
・経営理念とそれへの想いは?
・将来、どのような会社、どのような経営者になりたい?
・社長は何歳までやるつもり?後継者対策は?
・現在と五年後の損益と貸借の主要数字を聞かせて
・今期、もっとも重要な経営目標はなに?
・その経営目標はどのような計画で達成する予定?
・作った計画をチェック・修正していく手段は?

●花坂はしどろもどろになった。武沢は腕時計に目をやり、こう宣告した。
「花坂さん、約束の45分が経ちました。ここから先は有料ですが、どうされますか?」

武沢はニヤッと笑みを浮かべ、正面の花坂は額に脂あせが浮いていた。
地獄のスタバミーティングになりつつある。

<明日につづく>