Best of がんばれ!社長  武沢 信行

ベストオブがんばれ社長!社長・経営者を応援する「がんばれ!社長」ベストメッセージ(メルマガ「がんばれ社長!今日のポイント」バックナンバーより選抜公開)

ガラパゴスを恐れない

      2016/05/10

「僕は僕です!」

ヒーローインタビューでそう叫んだのは巨人のルーキー高木勇人投手。すべてがグローバル化し、標準化していくなかで「僕は僕です」は個性を主張しようとする意味深長なメッセージと受け取った。

他の島との接触をさけてオリジナルな進化をとげたガラパゴス諸島の生物に例えて、日本で独自に発展した iモードなどの携帯をいつしか「ガラケー」(ガラパゴス・ケータイ)と呼ぶようになった。しかしそれでは真摯にものづくりをしてきた日本の通信企業や携帯メーカーに失礼過ぎると、「フィーチャーフォン」(特徴的な電話)と言い換える人たちも現れた。でも私たちが好んで使うのは「ガラケー」の方であり、日本人も少々自虐的過ぎやしないかと思う。

2008年に登場した iPhone 以降、徐々にスマホのシェアが高まってガラケーは半分ぐらいになった。iPhone のあとに登場したアンドロイドスマホのなかには、ガラケーで動くものもあり、それを「ガラスマ」(ガラパゴス化したスマートフォン)と呼んでいる。

世界の標準にくらべて日本のスマホ市場は iPhone のシェアがとても高いことから、「iPhone ガラパゴス」という単語まで見聞きするような始末。何でもかんでもガラパゴス。ここまでくると、世界の標準に合っていないことがとても悪いことのように思えてくるから不思議だ。みんなに合わせるのが好きな日本人には、「僕は僕です。私は私です。日本は日本です」と考える訓練が必要なのかもしれない。

みんなに合わせるために右顧左眄(うこさべん)していたら、生き馬の目を抜く世界企業のなかで日本企業は翻弄されるばかりだ。そういえばこんなことを思い出す。コンピュータなどに使われる半導体やパソコン OS はもともと日本メーカーの技術が先行していた。しかし、いつしか半導体もパソコンもOS もすべてアメリカ企業にもっていかれた。日本がインテル、マイクロソフト、IBM、アップルを作れなかったのはなぜか。

そういえば、かつてシャープのザウルスは日本で圧倒的な市場をもち、アップルや IBM のパームコンピュータよりも技術的にも製品的にも優れていた。しかし、iPhone 登場でザウルスは地上から消滅した。あたかも本物のザウルス(恐竜)のように。

ソニーやパナソニック、シャープなどの液晶テレビは短い期間、世界をリードしたが、あっという間にアジア勢の価格攻勢の前に完敗した。同じことがスマホ端末市場でも起きている。それに、ウォークマンで世界の度肝を抜いたソニーの携帯音楽プレーヤーも iPod に市場を奪われた。

まだ他にも思いだしてきた。
マリオや FF(ファイナルファンタジー)で世界を席巻したゲーム市場も今では外国勢に押されっぱなしである。かつて旅行者の首からぶら下がっていたカメラは、ニコン、キヤノン、オリンパス、ペンタックスだった。デジカメ市場ではソニーやパナソニックも世界のなかで健闘していたが、今、カメラといえば iPhone、Android 端末 にシェアを奪われ、かつての勢いを失っている。

産業用ロボットで世界を圧倒していた日本の技術も、サービスロボットの分野では日本の独壇場といえる状況ではない。セイコー、シチズン、カシオといった腕時計メーカーも AppleWatchなどのスマートウォッチの出現で激震が走っている。

気持ちとしては「Buy Japan」(日本製を買おう)だが、消費者が欲しがる製品は皮肉にも外国製が多く、「Bye Japan」(さよなら 日本製)になってしまっている。

こうしてみると、日本はよほど国際ビジネスが下手くそのように思えてくるし、悲観的な気持ちしかわきあがってこない。だが、それは物事の一面を見ているに過ぎない。70年前、焼土と化した敗戦国日本が技術と頭脳と勤勉さでここまでやってこられたわけだ。この程度のことで意気消沈するわけがない。

いまでも世界に誇るものがまだまだ日本のなかにたくさんある。トヨタ自動車は三年連続世界首位で、国内自動車メーカーの国際競争力はいずれも高い。それに、日本の造船技術は世界のトップクラスで、日本企業の受注量は世界一を奪回した。地震国・日本が高層ビルを建てても平気でいられるのは世界が驚く免震・耐震技術があるからだ。

日本の4大オートバイメーカー(ホンダ、ヤマハ、スズキ、カワサキ)は、そのまま世界のオートバイ4大メーカーである。あのハーレー・ダビッドソンや BMW ですら、好事家の趣味の対象程度のシェアに過ぎない。

また、ヤマハのマリンエンジンは世界の船外機市場のトップシェアを誇り、アフリカなど一部の地域では7割を超えるシェアを誇る。名もない中小企業の高い技術力が世界シェアのトップを取っていたり、外国製品のなかに日本の技術が入っているものも無数にある。

「お・も・て・な・し」の厚遇サービスや寿司・和食に代表される日本食文化の豊かさや、日本産の高品質な農作物など、まだまだ誇れるものがたくさんあるし、今なお新たに育っている。

あとは我々経営者が担当する事業分野で独自性を発揮し、お客を驚かせるような仕事をしていけば良い。ガラパゴスと言われようが言われまいが関係ない。外野の声に惑わされず、「僕は僕」「私は私」で市場を創造することに専念すればよい。あとは政治家や官僚がガラパゴスのそしりを受けることを恐れすぎていないかどうかをチェックしていけばよい。

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