昨日は株式会社ベンチャー・リンクの小林忠嗣会長の新春講演を最前列で聞いてきた。テーマは「ハッピーリタイアメント」。
本音を言えば、私は引退などに興味がない。一生現役で働くつもりなので、悠々自適の引退生活など一度もあこがれたことがない。
だから、このセミナー参加も本来ならばありえないこと。
もしベンチャー・リンクさんが「がんばれ社長!」の広告主ではなく、私が小林会長を以前から尊敬していなければ参加することはなかったはず。だが、それが縁というもの。なにが起こるかわからない。
結論
昨日の講演は「百万円出しても聞く価値のある内容だった」。
こんな話が聴けるなんて、今年も春から縁起がいい。
「がんばれ社長!」ヘッダー広告でこの講演会のお知らせを何度もしてきたので参加された方も多いと思う。
今日の東京講演が最終回となるが、経営者の人生観を変えてしまうほどの価値がある内容だった。
http://e-comon.co.jp/pv.php?lid=1067
社長は40才を超えたらしっかりと引退を意識した経営計画を作ろう。
50才を超えたら無条件でそれを作ろう。
もちろん39才未満の若者も、その事業はいつでも引退できるようにしておくという意味で、引退計画を作っておこう。
一生現役で働くことは立派な志だが、一生現役で働かざるを得ない状態は立派ではない。それは「無計画」のそしりを免れない。
だから、私も宗旨替えした。一生現役のつもりは変えないが、今の会社はいつかきれいさっぱり誰かに売り払う。自分が引退するときは、会社も自然消滅するとき、なんて弱気な考えでは事業家として失格だ。
もう一度自社の経営マニフェストを、ハッピーリタイアメントを前提に作り直してみようと思う。
それほどのインパクトを与えてくれた小林講演、印象に残った箇所を整理してみよう。
<以下の内容は株式会社ベンチャー・リンクさんの講演内容を中心に若干、武沢が加筆したものです>
まず、悠々自適のハッピーリタイアのイメージを確認しよう。
・健康
・豊かな資産
・安定した収入(配当+利息+年金)
・円満な人間関係
・家族環境
・やりがいと楽しみ(趣味や仕事、ボランティア)
が備わっていること。しかも事業から完全に断ち切れていて、個人保証債務や担保などもなくなっている状態を目指す。
経営者が引退時に手にしたい個人資産とは、
毎月100万円の可処分所得を目指すとした場合、年に1200万円の収入になる。それを逆算すれば、
・4%運用なら3億円
・3%運用なら4億円
・2%運用なら6億円
・1%運用なら12億円必要
ここでは、2.4%運用として「5億円を作る」ことを目指すとしよう。
ただし、引退後も後継者から給料をもらい続けるつもりなら、この5億円という金額は下げることができる。
しかし、その分だけ後継者に気をつかう必要がある。真のハッピーリタイアとは、事業からの開放なくしてあり得ないので、後継者に給料をおねだりしない。潔く5億円を作る決心をする。
先述したように、事業から解放されるためには担保や個人保証の解除が必要。従って、真のハッピーリタイアとは、
「事業の売却」または「自社株の売却」なくしてあり得ない。
※売却価格の20%が税金で取られるので厳密には6.25億円で売却できないと5億円にはならない。
ところが、事業や株式を買う側にとっては、懸念材料が多い。
たとえば、
・資産内容は健全か
・簿外債務はないか
・社長がいなくなっても顧客や取引先との関係は継続されるか
・主力社員が会社に残ってくれるか
・そもそもこの会社を買って、これからも収益を上げ続けられるか
など、気になることばかり。それでも買う決断ができる人とは、
「自分ならば現社長より上手く経営できる」という確信のある人だけ。
まず、その候補は同業他社や競争相手だろう。
買う側の懸念は、他人であるかぎり払拭できるものではない。だが、心情的にみて、ライバル会社に我社を売るのは辛いもの。社員だって良い気がしない。
一番良いのは、同業他社や競争相手ではなく、優秀な幹部に会社を買ってもらう方法。
もし「優秀な幹部」のなかに、わが息子や娘婿が入っていればなおさら良いだろう。
親族だから継ぐ、継がせないという判断ではなく、あくまで優秀な幹部に継がせることが前提。
「優秀な幹部」は通常、会社や株式を買い取る資金をもちあわせていない。買いたくても買えない相手に買わせる方法はあるのか?
それが、「ある」のだ。
現時点で最有力の方法はMBOだろう。
手元に現預金がなくても資金調達ができる方法はMBO時の資金調達。
(MBOについては後述)
優秀な幹部(息子や娘婿含む)によるMBOが最高の事業売却手法である。
それを10年以内にどうやって実現するか、がポイントとなる。
どうしたらよいか。
・誰でも最低5億円以上で買いたいと思える事業(会社・組織)を作ること。
そのためには、少なくとも数千万円以上の経常利益が上がり、今後もそれが見込めること。
・負債がある場合は、年間返済額を利益に上積みできること
・相応のキャッシュか、価値ある資産が社内にあること
・その事業を買ってでも引き継ぎたいと思える気概のある後継経営者を育成すること
である。
「気概ある後継経営者を育成する」とはどういうことか。
・もっと魅力ある会社に転職したい
・自分で会社を立ち上げたいという気持ちよりも、
・この会社のオーナー社長になるほうが面白そうだ
と思ってもらう会社をつくることである。
このように非上場企業でありながらも、「5億円でも買いたい会社(事業)」とは、会社の価値が明快で将来の可能性がはっきり見えていることなのである。
後継者育成とは、継ぐのをいやがる息子や社員を口説くことではない。
幹部社員たちが継ぎたいと思わせる会社を作り、そうした幹部たちにオーナーになる手引きをしてやり、後継者競争に勝ち抜いた者に継がせることなのである。
こうして、次の社長を作ることができて社長の仕事は完成する。
それは戦略的かつ計画的に進められるべき社長の大仕事なのだ。
<明日につづく>