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得する人、損する人

ある職場でのやりとり。

社長:A君、悪いけどこの仕事を今日中にやってくれないかな。
A:わかりました、今日中ですね。

と嫌な顔一つせず、むしろ社長に新しい仕事を頼まれたことがうれしいようですらある。
実は彼の会社はこのところ受注が増えて忙しい。
A社員の仕事量も倍増しているのだが、彼はいつも笑顔を絶やさない。

そこへ新たな経営課題が発生した。急ぎのテーマだ。あいにく社長は今夜から出張が入っていて、その仕事はできそうもない。
誰にその仕事を頼もうかと社長は考えた。
いつもなら迷わずにA社員に依頼する内容だが、先ほど、別件の緊急課題を頼んだばかりだ。

よし、今回はB君に頼んでみよう。

社長:B君、悪いけどこんな問題が起こった。明日にでも結論を出したいので今日中にこの件のデータ集めをやってくれないかな。
B:(明らかに迷惑そうに)えっ、ボクがですか。今日中?
社長:君が忙しいのは分かっている。それを承知で君に頼んでいるのだ。
B:まぁ、分かりました。そのかわり、今取りかかっているこの仕事が、その分だけ遅れますが良いですね?
社長:良いわけないが、しようがない。君にやってもらうしかないんで。

“新しい仕事を頼んだのだから、今までの仕事はその分だけ遅れる”というのがB君流仕事術。しかも、不平そうな顔でそう言う。

ところが、A君流仕事術とは、”新しい仕事は引き受けましょう。同時に、今までの仕事も遅滞なくやりますよ”というものだ。しかも、笑顔で。

むかしから、仕事は忙しい人に頼めと言う。

その理由は、忙しい人ほど時間管理が上手なので、いったん引き受けたら必ずやってくれる。
ところが、忙しくない人は、時間管理の必要がほとんどないので、頼んだ仕事も期限内にやってくれるかどうか分からないから、ということらしい。

だが、実際はそうではない。
頼む側からみて、頼みやすい相手と頼みにくい相手がいる、というのが真相だ。

結局、A君は同僚より忙しくなって、一時的にはつらい思いをすることもあろうが、彼の元にはいろいろな人からいろいろな話が持ち込まれる。結局、得するのだ。

一方、B君はやっかいな課題を背負い込まずに済むのでマイペースを貫けるかもしれないが、人も仕事も集まってこない。
結局、損するのだ。

個人でこれだけの差がつくわけだから、会社単位で比較すると、もっと差がつく。
仮に、A君のような社員ばかりが働いている会社だと、お客さんから信頼されて仕事が途切れることがない。
反面、B君のような社員ばかりが働いている会社だと、お客さんは近づかなくなる。

まずは、あなた自身が頼まれ上手な人間になろう。

そして、頼まれ上手な部下を育てよう。頼まれ下手の部下がいたら、教育するか、いっそのこと取り替えてしまおう。
そして、会社全体が頼まれ上手な会社になろう。

提案がある。

今度の忘年会の居酒屋で忙しそうな店員さんに「ちょっと、お水ください」と、あえて声をかけてみよう。
できるお店、できる店員ならこう答えるはずだ。

「はい、かしこまりました。」
そのあとに、「少々お待ち下さいませ」がついてもよい。

できないお店、できない店員ならこう答えるはずだ。

「少々お待ち下さい」

要するにお客は、水を待つのか、注文する行為を待つのか分からない。
こんなお店は、相手の立場に立てず、自分の立場でしか仕事をしていない証なのでリピートする必要はない。

でも先のA君、本当に断らないといけない場合どうするか。

その時も、笑顔は変わらない。「申し訳ありません。お引き受けしたいのですが・・・」で充分誠意は伝わる。
そして、断るだけでなくその仕事の内容を聞いて社長の問題を親身に聞いてあげる姿勢があれば、断りながらも信用力アップになる。
仕事を引き受けながら信用ダウンするB君より、はるかに上手ではないか。