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ネクタイを燃やす人

今朝の山形市は未明から雪。大きめのぼた雪だが、間断なく降り続け、駅前通りの街路樹がうっすら白くなって、クリスマスツリーに見える。

昨日・今日の二日間、経営マニフェストを完成させる大詰めの作業に入っている。今日は9時から15時まで、今まで書きためてきたマニフェストを一枚もののマンダラ・サマリー(概要)に仕上げる作業とその添削、相互発表を行う予定だ。

昨日は、「社長としてのあなたが、今後もっと割きたい時間ベスト5」を考えていただく時間を確保した。

・経営マニフェスト作りの時間
・経営者としての勉強をする時間
・人材の採用
・人材の育成
・TOPセールス(表敬訪問や営業訪問)
・人脈の拡大
などの項目に人気が集まったが、もっとも多かったのは「社員とのコミュニケーションを強化する」というものだった。

「社員とのコミュニケーションを良くしたい」と多くの社長が願っている。毎日職場で顔をあわす相手なのに、それでもコミュニケーションが足りないというのは不思議な気がする。
だが、よくよく考えてみれば、親子だって夫婦だって恋人だって、一緒にいるからといって相手のことが理解できるとは限らない。
一緒にいることで、かえって分からないことが増えたりする。

人はコミュニケーションを欲している。

もっとコミュニケーションしたいがために一緒に食事したり、お茶やお酒を飲んだり、カラオケに行ったり、旅行に行ったりする。
だが、一緒にいてワイワイ楽しんだだけでは、体験の共有はできても価値観や考え方を共有できるわけではない。

大切なテーマに沿って話しあうことで、はじめて相手を理解できるようになる。
要は、いかに効果的に話し合い、酒を飲み、食事をし、お茶を飲むかという技術と哲学の問題だ。
そうした時間の過ごし方の達人になれば、旅行やカラオケなどと特別な場を設定しなくてもコミュニケーションがとれるようになる。

ちなみに私自身はコミュニケーションが上手ではない。
子供と進路について話し合うときでもなぜか親の私が緊張してしまうし、実家の母親に生活費の状況を聞こうと思って帰省しても、聞きそびれて帰ってくる。

だが、私が以前働いていた会社の社長O氏は、コミュニケーションの達人だった。
おそらく当時、誰よりも私のことを理解してくれていたし、誰とでもそのような深い関係を作っていくことができる人だった。

その彼が、人とコミュニケーションをとる突破口に使っていたのが質問だ。最初はあえて構えずに、気軽で明るい感じに

・ところで最近調子どう?
・奥さん(ご主人)元気?
・仕事は順調?
・顔色いいね?
・最近のマイブームなに?
・今なにか企んでるの?

など軽いジャブのような質問から入っていく。それがフックとなって、「続きを聞きたいので、ちょっとコーヒー一杯つきあえよ」とか、「今からビール一本つきあう時間あるか?」などと誘ってくれる。

最初のうちは自分の話はほとんどしない。相手の過去・現在・未来を知りたいがために質問に時間を割く。
純粋に聞いてくれるので相手は心を開いて話し出す。いや、自分でも自分のことを理解していないことに気づくことも多い。

O氏の欠点は飲み過ぎること。彼が酔うと、相手の話に感極まって、自分のネクタイを燃やすのだ。

「武沢、お前の人生の未来はみえた。きっとうまくいく。お前なら成功する。だが今のお前のままでは成功が遅れるばかりだ。生まれ変われ、オレが見ている。応援する、保証する、オレの決心はこれだ」

といってネクタイを燃やす。

相手が無目標だったり、無計画に過ごしているのがわかると真剣に怒って相手のネクタイを燃やし始める。

O氏は今は故人となられたが、こういう真剣な関わりを持ちたがるコミュニケーションの達人がなつかしい。