★テーマ別★

落合竜を斬る

“星 飛雄馬”という名のお笑い芸人が、自分の親を嘆いていた。
それが本名なのだという。いくら何でもかわいそうだと思うが、親の気持ちも分かるほど、「巨人の星」は国民マンガだった。

それが「新約 巨人の星」では花形満が主人公だという。マンガの世界にまで巨人離れが進んだようだが、だったらなぜ「阪神の星」にしないのだろう。やっぱり巨人あっての阪神なのか。

とにもかくにも今年のプロ野球は中日ドラゴンズの日本一で終了した。
53年前、私が生まれた年に日本一になって以来の優勝だというので、おめでとうと申し上げたい。

落合監督の非情采配については今週発売の週刊誌でもあらためて批判されるなど、物議をかもしている。
だが今日はその采配を批判するつもりはない。

それよりも、監督の意思通りに動ける選手を育て上げてきた落合監督の手腕は高く評価されるべきだろう。他のチームの選手だったら、果たして落合采配を消化できたかどうか。

そこで今日は、落合ドラゴンズを分析してみたい。

ペナントレースをふりかえり、ざっくりとした印象として中日は、投手力の高さと鉄壁の守備で僅差のゲームをものにしてきた印象が強い。
だが、実はそうでもない。
データを見るかぎり投手力も守備力も巨人や阪神と変わらない。いや、むしろ劣っているといえよう。

まずはセリーグ各チームのシーズン勝敗表を見てみよう。データは日本野球機構オフィシャルサイトにあるものを引用し、武沢が独自の角度で分析してみる。

日本野球機構 http://bis.npb.or.jp/2007/stats/

<セリーグ・チーム別成績>

一位: 巨  人 : 80勝 63敗 1分 勝率.559 ゲーム差 —
二位: 中  日 : 78勝 64敗 2分   .549  1.5
三位: 阪  神 : 74勝 66敗 4分   .529      4.5
四位: 横  浜 : 71勝 72敗 1分   .497      9.0
五位: 広  島 : 60勝 82敗 2分   .423      19.5
六位: ヤクルト : 60勝 84敗 0分   .417      20.5

今年はセパ両リーグとも混戦で、一位のチームが勝率6割を下回る結果になっている。

次にセリーグ上位3チームの攻撃力、守備力の比較をしてみよう。

球団   打率 本塁打数 得点数 失点数 防御率 守備率 失策

巨人   .276  191   692   556  3.58  .990  54
中日   .261  121   623   556  3.59  .987  69
阪神   .255  111   518   509  4.01  .988  68

この表をご覧になって何が読みとれるだろうか。

巨人の本塁打の多さと得点の多さ、それに守備力の高さが際だっているのが分かる。阪神は得点・失点ともに少ないのが目立っているが、中日が際だっているものは何もないようだ。

仮にこの表だけを見せられたら、誰もが巨人がぶっちぎって優勝したと見るだろう。
たしかにペナントレースは巨人が優勝したわけだが、それも僅差であり、日本一に輝いたのは中日ドラゴンズの方だった。その中日の強さはどのデータに表れたのだろうか?

それと思われるのがこれだ。

球団  盗塁 四死球 犠飛 与故意四球

巨人   63  390  102   31
中日   83  538  136   57
阪神   46  428  130   26

いかがだろう。中日は圧倒的に盗塁と四死球の数で他を上回っており、相手に与える敬遠四球の多さでも群を抜いている。
つまり、攻撃機会にあってはボールを良く見極めて四球を取ろうという意識をもった選手が多い。しかもいったん塁に出れば、盗塁を狙える選手が他球団よりも多い。
そして守備機会にあっては、敬遠すべき場面では思い切って敬遠する。

勝つための野球を知悉しているのだ。

最近は、昔とちがって高校野球もバントをしない攻撃型のチームが増えているなか、中日の強みはひと昔前の高校野球のようだ。
(送りバントの数が多いわけではないが)
これは決して落合野球を批判しているのではなく、事実を申し上げている。

また、こうしたデータには表れてこない点でも秀でているはずだ。
たとえば、進塁打が打てるとか、ファインプレイが多いとか、打者によってきめ細かく守備位置を変えている、などでも徹底されているのだろう。

こうした野球がファンにとって面白いかつまらないかは別にして、落合監督と中日ドラゴンズの強みは、チームが勝つために自分たちがやるべき野球というものをきちんと共有している点にある。

自分が何をすべきかということを皆、言わなくてもわかる選手が多いのだろう。そして、それが出来る大人の選手が揃っているのだ。
こういうチームは、もしメジャーでやっても互角以上に渡り合えるのではないかと思う。

あなたも、こうした落合竜の優れた点をビジネスに活かす方法を考えてみようではないか。

さあ、間もなくアジアシリーズが始まるが、落合中日に死角はないはずだ。ただし、選手の高齢化や主力選手の去就問題もあって来期以降は予断を許さない。