未分類

ベアゼロ

トヨタ自動車がベアゼロ回答を提示する。(今日の日経一面より)

この記事、今どき珍しい報道でも何でもない。すでにホンダも発表している。だが、このニュースには万感のメッセージが込められているように思えてしようがない。

トヨタやホンダは負け組企業ではない。世界的にも「勝ち組」を代表する企業である。しかもトヨタは、空前の利益1兆円を誇っている。そこがベアをゼロにしたのだ。これに先立ち、不振の電機や鉄鋼などでは組合側がベア要求を見送っているため、今年は大手企業の主要業種が軒並みベアゼロとなる。

ちなみにトヨタは定昇は実施する予定(6500円)であり、最高利益は賞与に反映させる意向だともいう。

給料を固定費化させるのでなく、変動費化させておきたいという企業側の意向が、今後ますます何らかの制度として加速するに違いない。

まず、定昇とベアの違いについてよく質問を受けるので、その確認から。

ベアとは、人事評価・査定の結果に関係なく、原則として全員が一律に毎年アップする賃金水準底上げ額をいう。定昇とは、個人ごとの年令や勤続年数、あるいは人事評価などを総合的かつ定期的に見直し、アップする金額をいう。

定昇とベアについて例をあげて説明しよう。例えば、年令給がある会社の場合には、次の例のように決められている。

20才 100,000円
21才 105,000円
22才 110,000円
23才


一年たつと自動的に5,000円アップする。この場合の5,000円のことを定昇という。更には、人事評価などによって、年令給以外の給与(例えば職能給)なども見直しするはずだ。その場合は、年令給・職能給双方の増額分を定昇という。

次にベアだ。
ベアとはベースアップの略であり、賃金水準のベース数字を上げることをいう。例えば、年令給を500円ベースアップした場合は次のようになる。

今まで  → 今後
20才 100,000円 → 100,500円
21才 105,000円 → 105,500円
22才 110,000円 → 110,500円
23才


中小企業でも賃金表に基づいて昇給管理している企業では、定昇とベアを分けて議論している。しかし、賃金表も昇給表もない圧倒的多数の企業では、定昇とベアを一括して管理している。それは、どちらであってもよい。大切なことは、社員への報酬に対する思想が、制度に反映されていることである。

さて、トヨタのベアゼロ回答。

回答の理由としてトヨタは、競争力強化を優先させるためとしている。年功序列的ニオイが色濃い定昇・ベアの賃金交渉に、ピリオドを打ちたいというのが企業の言い分であり、当然の欲求だ。

私のメッセージは更に過激だ。

・大企業のベアゼロ・・・それは当然。今頃遅すぎる議論。
・定昇・・・定昇という単語自体を変える必要がある。定期昇給ではなく、「定変」(定期変更)と呼ぶべきだろう。なぜなら、      企業には高くなりすぎた給料で身動きが取れない幹部がゴロゴロいる。こうした人たちを適正給与水準にソフトラン      ディングさせていくには、定期変更か大胆な給与カットしかない。

さて、我々にとっての報酬は今後、国際水準の中で決められるということだ。あなたと同じような技能をもった人が世界に何人いて、その人たちは幾らの年収で働いているかが、あなたの報酬水準を決める時代がすぐそこにきている。

比べられるのがイヤだという人は、ナンバーワンかオンリーワンになることだ。私もそれを目指している。