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社長の勘違い

「売上を減らしたくない」と強く思うあまり、いろいろなことに手を染めすぎて、結果的にあぶはち取らずになっていることが多い。

先日お目にかかったA社長(55)は、印刷が主力事業。だが、それ以外に、広告代理、旅行代理、写真スタジオ、HP制作、パソコン教室などを行っている。しかもわずか10名程度の社員で。

「ポートフォリオ戦略のつもりです。一人一事業部を任せて、私は全事業部の副事業部長、と目論んでいるのですが・・・」と苦笑するが、私が予想したとおり業績はかんばしくないそうだ。
その理由はカンタンで、広げすぎ。

本業の印刷だけでは利益が出ないと、10年前から少しずつ事業を拡張してきた。その結果、社長の関心やスタッフの戦力をかえって分散させてしまっているのだ。
いかなる事業とて、採算分岐点を超えて黒字ゾーンに到達するには、沸点に到達するエネルギーが必要なのだが、分散しては沸騰しない。

結論:ひ弱な収益しか期待できない事業の多角化はやめる。まず、収益の一本化をはかる。ひとつの収益事業だけで会社が黒字になるようにする。

次に世話好きのB社長(64)。

「ミスター世話人」と呼ばれている文房具卸し会社のB社長は、人の世話をすることと、おしゃべりするが大好きだ。
地域の方々の人生相談・経営相談・恋愛相談などなんでも来いらしい。

B社長は、森田健作によく似た熱血漢でもあり、町内会やPTAなどの世話人もすすんで引き受けてきた。地域の会合などに彼の会社の会議室を提供している。

仕切り上手な彼は、いろんな会からひっきりなしにお呼びがかかる人気者。

先日、そんなBさんにお会いしたとき、「業績ですか?まぁ、ボチボチなので良しとしています。そんなことより、他人様をお世話するのが私の生き甲斐。それが本業にも必ずよい影響があるはずですから」と、話しておられた。

あなたはどうお思いだろうか?

誰もBさんの悪口を言う人はいないだろうが、私はあえて、経営者としてのBさんは「間違っている」と言いたい。
「その前にやるべき事があるでしょ」とも。

「人それぞれだから自由でしょう。Bさんも社長なんだから、人にとやかく言われる筋合いはないはず。事実、人に喜ばれているのだし」という考えもある。

また別の考えとして、

「社長とは言え、何でも自由なのではない。業績を上げることやお客様を本業で喜ばすために創意工夫を絶やさないのは、社長の責任ではないのか」という考えもある。

どちらかというと、私は後者なのだ。

だから少々荒っぽいが、
結論:人のためだからと言って本業に関係のない活動の時間は減らす

Bさんを擁護する人から反論の声が聞こえてきそうだ。

「Bさんは、会社をそれほど大きくしたいとは思っていないのではないか。会社の方はそこそこで良いので、それより、好きなことに自由に時間を使いたいのだと思う。それってある意味、理想的な状態」と。

私は、それでもB社長を容認できない。

「会社はそこそこで良い、と思えるような仕事を本業にしていて良いのですか?」と逆に質問してみたくなる。

偉大ゾーン(好きで、得意で、利益が出て、理念に合致する仕事)で仕事をする限りにおいて、仕事はそこそこで良いなんて言えなくなるはずだ。

もちろん私だって、本業に関係のないことは一切するな!などと強要するつもりはない。
あくまで、優先順位と劣後順位の問題だ。

社長の優先順位は、事業計画を作って会社を作品として完成させていくことが何より先決。
経営よりも世話人が好き、というのなら、世話人活動を本業にする方法を考えよう。
もしくは、社長の座を後進に譲ろう。

社長は、今の本業に一番情熱的な人がやるべきなのだ。