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その受注、待った!

「とりあえず遊ばせておくよりは良いでしょう。」と青木専務(仮名)は言う。自社で抱える左官職人に仕事がない。だったら採算度外視の仕事でも受注してしまおう、というのが青木専務の考え方だ。

それに対し、「その受注、待った!」と大声で発言したのが木村社長(仮名)だ。

「青木専務、採算度外視の仕事はもうやめようじゃないか。先日も物件別で利益管理してみたら、物件の6割が赤字だったじゃないか。残った4割の物件が黒字とは言っても、収支トントンに近い黒字もある。実質的には2割の物件で会社全体の8割を稼いでいる。やっぱりうちも8:2の法則が働いているんだよ」

しかし、青木専務はまだ食い下がる。

「社長、お言葉を返すようですが職人をブラブラ遊ばせておいてモラルを下げさせるよりは、多少の赤字は覚悟してでも仕事をやらせるべきだと私は思うのですがね。」

このような見解の違いはどこにでもあるものだ。特に営業系の人材は、「損益」よりも「稼働」を重視する傾向が強く、青木専務のような発想をする人が少なくない。だがこの場合、木村社長の判断が正しいと私は思う。数量や稼働率の拡大だけを追求していくとドロ沼に一直線に突き進むことが多いのだ。

・作れば作るほど儲からない製造業
・社員が増えるほどに利益が減っていくサービス業
・残業、早出、休日出勤なんでもやっているのに儲からない営業会社
・メニュー表の内容が増えれば増えるほど利益が減った飲食店

ひと言でいえば、「貧乏ヒマなし状態」である。

こうしたジレンマに陥らないようにするためには、木村社長の言うように、採算度外視の仕事はやってはいけない。ヒマな状態を恐れてはならないのだ。むしろ、ヒマならヒマとわかるようにしてくれていることが大切だ。

・儲からないのに忙しい
・忙しいのに儲からない

その状態から抜け出すためには、稼働率の低下を恐れず、採算割れの仕事を受注しないことだ。
人間、本当にヒマな状態になって始めて真剣に次の手を考えるものである。