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定着率の質を問う

本当は辞めてほしくない社員が辞めていくのはつらい。その反面で、負けぐせ社員や問題児社員が辞めていくのは歓迎だ。

だから、「社員の定着率は高い方が良いか、低い方が良いか」と聞かれたら「辞める人次第」としか答えられないのだ。

昭和の企業経営では、社員の帰属意識を高め、定着率を高めるためのあらゆる方策を導入した。高度経済発展と求人難という時代背景がそれを求めたのだ。

たとえば、永年勤続表彰や社員旅行、社員運動会や家族への職場見学会、退職金制度などなど、社員に永く勤めてもらうために、あらゆる手段を講じた。

社員はひとつの企業で永年勤め上げることが美徳とされ、世間では、転職を重ねる人を問題視したし、転職は「履歴書を汚す」とまで考えられていた。(事実、私が転職する時、そう言われた)

だが、今の会社経営にあっては、社員の定着率そのものにはそれほど価値がない。定着率を目標設定している経営者にお目にかかることはなくなったのだ。

今では定着するだけでなく、成長し、貢献し続けてもらうことに価値がある。
従って、昭和の時代に流行した帰属意識向上対策や定着率向上対策の多くは、今、そのまま使うことはできないのだ。

平成の時代の企業経営で大切なことは、社員への動機づけを提供し、研修教育を提供することである。おもしろい挑戦が出来、必要な技能が学べる職場環境が大切だ。

その一方で、社員に雇用や待遇に関する保証を与えることは出来ないはずだ。

今、いくら業績が良い会社であっても、これから先も社員に対して高い給料を保証し、毎年の昇給を約束し、ふんだんな休日を保証してやることなど出来ないのだ。

それは、社員と会社の取引関係の結果、可能になることであって、企業が一方的に社員に対して好条件を提示するなどあり得ないのだ。

たとえ、潤沢な資金量があったとしても、それは続かないことである。

それよりも、わが社が存続する限り最大限に高い能力発揮を社員に要求し、貢献を期待して研修をほどこし、適切に利益分配を行ってあげることしか社員には約束できない。

いや、その約束があれば社員にとっては充分なのだ。

社員にプロフェッショナリズムを要求すると、社員は成長できるし職場がプロフェッショナル的で楽しくなる。その結果、かえって社員は辞めないという逆転現象がおきる。

そうした意味における定着率の高い会社をめざそうではないか。