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今そこ、ここ

あるバラエティ番組でお笑いタレントが、「どうしてみんな、そんなに結婚を急ぐの?世界何十億人の中から最高のパートナーを選べば良いのに、たまたま知り合った相手と結婚しちゃって大丈夫なわけ?」と言った。独身者がよく使うロジックだ。

横で不快そうな顔をして細木数子氏が聞いている。もう我慢できない、という顔だ。
そしてついに、細木氏が爆発した。「あなたねぇ・・・」

その後、家人がチャンネルを切り替えたので細木発言の続きは聞けなかったが、推察するに、「身近な人を真剣に愛することができない人が世界中回ったって同じこと」というようなことではなかろうか。

もし、外国人から「日本人ってどんな人」と聞かれたら、あなたの日本人に対する知識を総動員して日本人論を語るだろう。
だが、その知識とは、知人友人や歴史上の人物など、ごく限られた人数の日本人をもとにしている。

「中国人ってどんな人」と聞かれたら、私も困るし中国にいる中国人でも答えにくいだろう。

最適な答えは、「私です」とか、「この人です」となる。

禅では、「ミカンの味は」と問われたら黙って目の前のミカンを食すのが正しい。「座るとはなにか?」と問われたら、無言のままでその場に座るのが正しい。

もちろん、ケースバイケースで、同じ回答が前回は正解で今回は間違いになることもある禅のことゆえ、正解は一つではない。だが、ミカンの味や座るという行為を言葉で論理的に解説しはじめるのは大いなる誤りだ。

本質はいついかなるときでも、目の前の「それ」である。

香港和僑会( http://www.wa-kyo.com/ )では、外国で働く日本人の価値を高めようと毎月複数回の勉強会を開催している。

知識や情報の勉強も多いが、和僑会の一番の基本は「礼節」にあるのではないかと私は思う。

同会の筒井代表は

「どの国で仕事をしようとも、どんな技術やサービスがあろうとも、まずは人としての基本ができていないと必ずいつか破綻する」と語る。

筒井代表が待ち合わせに遅刻することはない。
約束時間の30分以上前にそこへ行き、読書しながら相手を待つようにしてから、遅刻はなくなり読書量は増えたそうだ。
そうした姿勢が香港和僑会全体をおおっているので、いつ参加しても心地よい。

香港和僑会のメンバーA社長が、ある日、上海の日本人勉強会に招かれ講演したそうだ。

聴衆の中に、ポケットに手を突っ込んだまま講演を聴いている若い起業家がいた。
さらには、遅刻してきても平気な顔の人がいた。
A氏は講演を途中でやめた。そして、そうした態度に苦言を呈した。

最初は、「俺たちは会費を払っているお客だ」と逆に言われた。
だが、香港和僑会で勉強してきていることを真摯に伝えた。

「外国で日本人の価値を高める、うんぬんの前に、将来立派な会社を作る、うんぬんの前にやるべきことがあるだろう」

今からでもすぐに始められる大切なことがあるだろう、と。

もともと経営者はそうしたことで苦情を言われにくい立場ではあるが、厳然と評価されているのだ。

後日談があり、その後、この日本人勉強会に招かれて講演に行ったのが私だった。

そのとき、ほぼ全員がスーツに身を包んで私を待っておられた。一人遅刻者がいたが、こちらが恐縮するくらいに詫びておられた。

松陰のことば、「宜しく先ず一事より一日より始むべし」なのである。