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社長の器

「武沢さん、最近の学生はラーメンをおごってやっても『ごちそうさま』すら言わなくなったね。」

「え、そうなんですか?」

「夕べもみんな遅くまでがんばってくれたから、アルバイト数人を誘ってラーメンを食べに行った。その帰りに『ごちそうさま』が言えた人間が一人。そして今朝、彼らと顔を合わせたのに誰一人『夕べはごちそうさまでした』って言ってくれない。これは親のしつけに責任があるんじゃないかと思う。」

私はこの会話から二つのことを発見した。ひとつは会話の内容通り、学生達の一般常識がなぜ低下しているのか、という問題。もうひとつは、この社長の「器」についてだ。今日は、この器を考えてみよう。

・・・遅くまでがんばってくれた、だからねぎらいの意味を込めてラーメンをごちそうしてあげた。・・・

それですべてが終わっている話ではないのだろうか。なぜごちそうさまが言えた人数を気にするのだろうか。翌朝の謝礼をなぜ期待するのだろうか。それは、“見返りを期待する善意”というもので、本当の善意とは呼べないものではないだろうか。

会社は経営者の「器」以上には大きくならない。ときどき例外もあるが、時間の問題でやがては器以下に後もどりする。この場合で使う、「器」とは何だろうか。度量とか器量を辞書で調べると、“力量、他人の意見を受け入れる心の広さ”などとある。

初対面で、しかもわずか30分お会いしただけの経営者がどの程度の器なのかを見抜くことは困難だ。しかし、器の小さい人だけはすぐに見抜くことができる。次のような共通事項を持ち合わせている方は、おおむね器が小さいように思えるからだ。

1.極端な自慢好きか、自己否定好き
2.他人批判が多い
3.感謝のことばがめったに出ない
4.秘密が多い
「ちょっとこれ以上は言えない・・」などの話し方が多い。
5.相対的な目標が多い
順位とかシェアなどのランキングをすごく気にする
6.表情(特に目)に変化がない
7.“気づかずに”同じ話題を何度もくりかえす

器とは、普段本人がそれを自覚しているものではない。しかし、間違いなく周囲は、あなたの器に応じた反応を返しているだけなのだ。

優秀な人が入ってこないとか、組織が出来ない、などというのはトップの器に問題があるのだろう。また、“あれだけ面倒をみてやった部下なのに、何であんな辞め方しかできないのか”というような退職のされ方が多いのもトップの「器」に起因するのではないか。

器を大きくするためには、余裕がいる。こちら側がイッパイ・イッパイの状態では部下の面倒を見るどころではない。

こちら側の心の余裕は何から生まれるか。それは自尊心だと私は思う。

“私は毎日最善を尽くしている。自分自身と今の現実から逃げることなく真正面から向き合い、必要な手を打っている”という自尊心。

それこそがあなたの自己イメージを高める。その結果、他人に対する愛と尊敬の精神が必然的に芽生えてくる。そうした気持ちで人に接すると、不思議と周囲もそうした反応を返してくれる。それが器というものだと思う。