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作戦能力に勝るもの

退屈なので、「オオカミが来たぞ~!」と村人に大声で告げまわる少年。村人が驚きあわて、手に手にオオカミ退治に使えそうなものを持って駆けつけてくるのが愉快だった。

ある日、本当に村にオオカミが来たが、誰一人少年を信用せず、結局少年は食べられた。

いつもウソを言う人は、やがて人から信用されなくなる。何を言っても言葉が軽石のように軽いのだ。
有言実行、発言したことに対して責任をとる人は言葉の重みが砲丸のように重い。

ある会社では、社長の方針がドッシリと重い意味をもち、別の会社では社長がいかなる方針を打ち出しても社員には何も響くものがない。
その差は、方針を受け止める社員の資質の差ではなく、社長の資質の差だと言ってよい。
それは、日頃の社長の言行一致具合によるのだ。

創業者が体調不良を理由に社長を辞任した。

突然、二代目社長を命ぜられた山田常務(仮名、48才)は、責任の重さをいやと言うほど感じていた。
業績が悪い。おまけに借金も目一杯あって、これ以上は借金を増やすことができない状況だった。先行きに不安を感じた社員が多数辞めていく。

山田新社長は、一週間考え抜いた末に「最初の三年間は社内に横たわる問題を一掃する」期間と考えた。
そのためには、社員のモティベーションをあげること。とりわけ、経営陣との信頼関係構築が不可欠と考えた。

社員のモティベーションは手練手管で操作できるものではないことを山田新社長は知り尽くしていた。
命がけで約束を守るという姿勢を見せねばならないと思った。

・「ああします」「こうします」と社員に約束すること
・「ああしてください」「こうしてください」と社員に要求すること

の二つが経営方針に書かれているが、まずは社員に約束したことは必ず果たそうと心に決めた。社長が約束を守らない限り、社員は約束を守ってくれないのだ。

社長就任後、半年たった。

「半年前に私がみんなに約束したことはこの10個でした。現時点で、一番目のこれは・・・」

と半年前に配布した社長目標をコピーしたものを一個一個進捗報告するようにしたという。
必ずしも全項目が達成されるわけではないが、約束したことを真剣に最後まで果たそうとする社長の姿勢が社員に伝わり始めた。

あれから10年たった。
この会社は業績が何倍にもなり、堂々たる利益をあげ、無借金経営を実現している。
社員に約束を守るよう強く要求できるようにもなり、規律の文化も生まれてきた。

「10年前社長を任されたとき、業績も資金も自信もなにもなかった。何が自分と自社にあるかといえば、誠心誠意というか愚直に約束を果たすということしかなかった。だからそれを真剣に守ってきた。今思えば、かえってそのことが幸いしたと思います」と山田社長。

オオカミ少年社長ではなく、山田社長のような姿勢こそが経営者のリーダーシップの根幹であり、作戦能力の良し悪しに勝るリーダーの資質ではないかと思うのだ。