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食うために生きる

食うことを目的にしていてはいけないと思う。

過日、食品製造の社長にお会いした。今の最重要目標をお聞きすると、「人件費の抑制」という答えが返ってきた。

理由は、「今の月間人件費5000万円を3500万円にすることで分配率が50%を切り、収支も黒字に転換する」というものだった。

たしかに赤字企業にとっては、黒字に転換することが目標となり、その手段として大胆なリストラが必要になることが多い。だが、その場合でも、最重要目標は利益χ万円など、積極的能動的に手に入れる結果でなければならない。

人件費の抑制はそのための手段なのだ。寝ても覚めても人件費ダウンの夢を見るのだろうか?そのことをご指摘申し上げたらこの社長、笑っていた。

たしかにそうなのだ。この社長と更に話し合っていくと、社長が理想とする会社経営の姿がしっかりとある。しかもA4レポート用紙で20枚におよぶ事業哲学や将来の夢が書いてある。しかし、まだそのレポート用紙を部下に発表できる段階ではないともおっしゃるのだ。なぜなら月次が赤字なので、部下に厳しい要求ばかりをせざるを得ない。将来の夢や自分の哲学を語っている場合ではないと言う。

黒字転換し、残った社員にしかるべき待遇が出来るようになってから夢を語り、哲学を語っていきたいというのだが皆さんいかが思われるだろうか。

「社長、黒字に転換して資金繰りのご苦労から解放されたとしたら、何をやってみたいですか?」

「資金が貯まったら新工場の建設だね。すでに設計士さんに図面を書いてもらってあるが、この工場が本当に実現すると、ラインや人の効率が今の2倍以上にアップする。それだけではなく、この最新鋭機械を入れることで、コンビニに提供している弁当が、今より格段にグレードアップする。これは食品革命だと思っている。」

この社長は、人件費抑制の話をしているときよりも、新工場のときの方が、はるかに目が活き活き輝いている。

その後の経緯はここでは省くが、大切なことは手段と目的のはき違えをしてはならないということだ。黒字転換する、そのために固定費を削るということばかりを考えていると、とたんに経営はつまらないものになる。それでは食うために生きているのと同じになってしまう。エネルギッシュで魅力的なリーダーであり続けるために、頭の中を占めている目標をもう一度見直してみよう。