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逆説

世の中全体に蔓延する世論や一般常識というものに対して、あえて逆の立場でものを考え、意見にすることを逆説という。三省堂辞書「e辞林」によれば、逆説とは「一見真理に反するようで、その実、真理を表わす説。『急がば回れ』の類。『パラドックス』」とある。

昨日お会いしたデザイン会社経営のT社長は、そうした逆説精神に富んだ魅力的な経営者だ。

「武沢さん、私は今朝の全体朝礼で雪印問題を取り上げました。マスコミのすべてが“雪印はけしからん”と報道し、我々もそれに賛同しているが本当にそれだけで良いのか、と。もし宝石店が簡単に割れるガラス戸だけで戸締まりしていたら、いつかは泥棒に入られるに決まっている。宝石店の自己管理責任もあってしかるべきです。雪印を擁護するつもりはないが、農水省の武部大臣の管理責任を誰も指摘しないのはなぜか。なぜ武部大臣までもが『徹底的に責任を追及する』と言っているが、本当に徹底的にやったら自分の責任になることになぜ気づかないのか。ひょっとしたら雪印は、狂牛病問題から始まった農水省不始末の、格好の標的にされているだけではないのか、という話をしました。私はその点、京セラの稲盛氏が『実学』の中で語っておられるダブルチェックシステムの精神の方が立派だと思う。人間にミスはつきものだし、ちょっとした不純な気持ちがいつ起きるとも限らない。そんなことで人の一生を台無しにさせてはいけない、ということからミスと不祥事から社員を守る意味でダブルチェックシステムがある。今回のさわぎには、国のシステムにそうした精神がまったくないところに原因があると思う。」

なるほど、雪印のやったことを批判するのは容易なことだ。だが、その報道に追従するだけでは逆説精神は養われない。
T社長の逆説精神は、デザイナーとして新しい価値を生みだし続ける上で大切なものだが、企業経営者も同じものが求められるのではないだろうか。

社会や業界の常識というものに敢然と立ち向かい、まったく新しい価値を生み出すところに企業経営の一つの醍醐味がある。大勢を占める考え方に乗っかっていくのは簡単だが、それだけでは没個性だ。

T社長には、業界常識をうち破るデザイン力と業界初の株式公開に向けた経営実績という背景があるだけに、充分な説得力を感じた。