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読者メール

メルマガの内容に関して読者の方からメールを頂戴すると、「あっ、そういう読まれ方をしているのだな」という発見があったり、私が見落としている視点を発見したりとおもしろい。

昨日のメルマガ内容について、公認会計士の花野さんから次のようなメールを頂戴した。

・・・いつもメルマガを拝読しています花野です。さて、本日のメルマガのB社長に一言

だがB社長いわく、仕入れも販売も毎月末日の夜中まで行われる。
にもかかわらず、末日までに請求書を揃えることなど不可能で、うちのような会社では毎月一日に試算表を出すなど不可能だ、というのだ。

という発言に対してですが、業種がわからないので、一般論で言いますと、毎月一日に試算表を出すことは、全然不可能なことではありません。

ただし、仕入を請求書で計上している限り、不可能ですが。

多くの中小企業が仕入を請求書で計上していますが、商品が納入されたときに、商品についてくる納品書で仕入を計上すれば、リアルタイムに仕入を計上することができます。

仕入計上作業の手間を省くための工夫は必要です。たとえば、バーコードにするとか、発注のときから専用伝票(発注書、納品書、受領書)に発注番号を印字しておくとか、です。

売上のほうでも、出荷する都度ないし販売の都度売上を上げるシステムを構築すれば、在庫管理もできて、販売の機会ロスも防げます。

多くの上場会社が、このようにその都度仕入や売上を計上しています(これを発生主義といいます)。

会社を管理(コントロール)するためいは、リアルタイムに動きをつかむことが、まず必要ではないでしょうか?

特に規模が大きくなって社長の目が届かなくなった場合には、システムに依存せざるを得ません。

だいぶ前に、本でモトローラーが毎月2日に全世界連結ベースの試算表を出していると読んだことがあります。
仕入先が送ってくる請求書を待つのではなく、その前にキチンと仕入計上を行い、請求書がきたら自社が計上した仕入額と合っているのかチェックするぐらいの会社を目指してほしいですよね。

武沢さんの趣旨とは違うかもしれませんが、思わずコメントしてしまいました。
取り急ぎ、お知らせまで
・・・

<武沢より>たしかに私の趣旨とは別の話題ではありますが、会計のプロらしいご意見、とても参考になりました。ありがとうございました。

花野さん http://homepage3.nifty.com/binspire/publicity.htm

もう一通、「事業計画書を作って発表するのは中止した」というM社長のメールもご紹介したい。

・・・武沢さん、はじめてメールを差し上げるMと申します。先日のメルマガで事業計画を作ることの大切さを強調しておられたので、私の会社の実例を申し上げると、実は去年から事業計画を作るのをやめにしました。
それ以前は5期連続で決算時期に事業構想発表会をやってきたのですが、あまりに変化のはげしい小売業界にあっては、予定がその通りになるケースがほとんどなく、前年データすらまったく当てにならないほど流行の浮き沈みや予期せぬトレンドが生じたりするのが我が業界環境です。ですから個人的には一年間のラフ見通しをたててはいますが、社内に計画書を配布したり発表したりするのはやめにしました。
実はそれでよいのかどうか、少々迷っているのも事実ですが、他業界の皆さんはいかがなものでしょうか。
・・・

<武沢より>Mさん、ご意見ありがとうございました。Mさんのようなお考えの方は、他業界にもたくさんおみえになります。決して少数意見ではありません。しかし、率直に申し上げて錯覚しておられるか、もしくはリーダーとしての責任を放棄しておられる方の発言のように思います。

会社が作る計画書というものがどういう性質のものかを考えましょう。
それは未来予測書でないはずですし、願書でもありません。内外の環境変化を踏まえたなかで、自社はかくありたいというWill(意思)を表明し、それを達成するための根拠や活動計画を考えるものです。

考え方によっては、計画書を作るという行為の中で社員も経営者も成長するのです。

ドラッカーの「現代の経営」に出てくる次の箇所を引用しましょう。
私が好きなくだりでもあります。

・・・
優れたマネジメント(経営者)のもとにある事業があげる利益は、偶然のものではない。まさに、あげるべくしてあげるものである。もちろん目標は、鉄道の時刻表ではない。それは航海のための羅針盤である。それは目的地に至る航路を指し示す。現実の航海では、嵐を避けるために予定の航路を何マイルもはずすことがある。霧のために船脚を落とし、ハリケーンのために止まる。戦争が起こったために、あるいは積み荷が航海中に売れたために、別の港に航路を変えることもある。
しかし航行する船の八割は、予定の日に目的地に着く。羅針盤がなくては、港を探すこともできなければ、何日かかるかを知ることもできない。
同じように事業の目標を達するには、障害物を避けるために迂回しなければならないことがある。実際のところ、障害物との正面衝突を避けて迂回することこそ、目標によるマネジメントにおいて最も重要なことである。
不況のときには、目標の達成を遅らせる必要もある。暫時、停止する必要もある。あるいは、競争相手による新製品の導入など、情勢が変化すれば、目標そのものを変更しなければならない。したがって、目標はつねに点検する必要がある。
しかし目標を設定することによって初めて、事業は晴雨、風向き、事故に翻弄されることなく、達すべきところに達することができる。
・・・

その通りになるから計画に意味があり、その通りにならないから計画に意味がない、というのではない。

ドラッカーの最後の2行、「目標を設定することによって初めて、事業は晴雨、風向き、事故に翻弄されることなく、達すべきところに達することができる」

と心から信じられるようになるまで、計画経営の仕組みを社内に定着させることから逃げてはならないと思うのだ。