名言

「『葉隠』は、日本の古典文学の中で唯一の理論的な恋愛論を展開した本といえるであろう。『葉隠』の恋愛は忍恋(しのぶこい)の一語に尽き、打ちあけた恋はすでに恋のたけが低く、もしほんとうの恋であるならば、一生打ちあけない恋が、もっともたけの高い恋であると断言している。(中略)心の中に生まれた恋愛が一直線に進み、獲得され、その瞬間に死ぬという経過を何度もくり返していると、現代独特の恋愛不感症と情熱の死が起こることは目に見えている。若い人たちがいちばん恋愛の問題について矛盾に苦しんでいるのは、この点であるといっていい」(三島由紀夫著『葉隠入門』より)