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健二の百年計画

山花健二(35才)は焦っていた。何度お見合いしても、はなしが前へ進まない。たくさんの結婚相談所に所属し、コンピュータによるお見合い相手紹介システムのメンバーにもなったのだが、いずれも不発に終わってきた。正確にいえば、お見合いまではできるのだが、そのあとが続かない。99%が初対面で終わるのだ。

健二は、趣味の将棋やバスフィッシングについては女性仲間とコーヒー一杯だけで何時間も語りあえるが、趣味仲間以外の女性とはあまり話をしたことがない。

だからお見合いの時には手のひらサイズのメモカードに、「テレビ、映画、音楽、本、服、食べ物、旅行、仕事、・・・」というようなメモを書いておき、会話がとぎれたら相手に見えないようにそのカードをのぞき込んで話題を作ってきた。

そんな健二も先月、パソコンを使って人生百年計画を作った。
エクセルファイルには健二の家庭計画や職業、収入や資産、資格、教養、旅行、趣味などの計画が4年を1クールとして25クール(100才)まで作られており、いま第9クールを歩んでいるというものだ。

「いける!これで話題には困らない。こんな先のことまで考えている自分は少数派だし『男らしい人』とモテルぞ!」と健二。

だが、現実は厳しかった。
あれから半年、10人以上の女性に「百年計画」を見せながら語ってきたが、いまだに初対面撃沈をくり返しているのだった。

「へぇ~、すごいね。がんばって下さい」
と百年計画を聞いた女性のほとんどが誉めてくれるが、姿勢は引いていくのがわかった。
だが、健二はめげなかった。自分の計画に甘さがあるから評価されないのだと、計画の完成度をたかめる努力を続けた。
ますます細部にわたって精緻に組み立てられてゆく健二の百年計画。

深みにはまっていく健二の前にある日、一人の天使があらわれた。
いつも通り熱っぽく百年計画を語りおわって感想を求める健二に対して、「へぇ~、すごいね。で私は何をするの?」と聞き返してくれたのだった。藤子さんという六つ年下の美しい女性だった。

「えっ?私は何を・・・ですか」

健二は意表を突かれた。

そんな健二も今、藤子さんと結婚でき、会社の社長になっている。
二度と独身時の百年計画でおかした独りよがりになりがちな失敗をくり返さないと誓っている。

とくに会社経営の場合、目標はスタッフと共有できてこそ意味をもつ。
協力者や理解者がいない計画では意味がないということを学んだ健二は、今多くの社員に理解され共有された目標と計画をもっている。

それを教えてくれた藤子さんには一生頭が上がらないことだろう。