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ネタが命

結成10年以内の漫才コンビがグランプリを賭けてガチンコ対決する『M1グランプリ』が好きだ。
一昨年の「アンタッチャブル」、昨年の「ブラックマヨネーズ」などデキの良い漫才をみていると、笑いで圧倒されてしまう。
前評判が高かったコンビもネタが悪かったりすると、まったく笑いが取れずに厳しい評価を受けてステージを去る羽目になる。

ネタが決め手だ。
グランプリを取った後ともなると、各テレビ局から引っぱりだこになるし、雑誌取材やコマーシャルだって舞い込む。昨日まではヒマをもてあましていた芸人がとたんに多忙を極めるようになる。

そんな多忙の合間をぬって、さらに面白いネタを生み出していかないと、すぐに飽きられる。多くの芸人はこの段階で落ちてゆくか、器用な人は司会業などに転身していく。
ネタによる笑いを極めようという芸人がきわめて少ないのは残念だ。

腕の良いマネジャーは、仕事で芸人を使い潰すようなことはしない。
休養やネタの仕込み時間を確保する。芸人はネタが命なのだ。

社長もネタ(アイデア)が命だ。
新製品のネタ、新事業・新サービスのネタ、マーケティングのネタ、イノベーションのネタ、人事のネタ・・・・
いつも新しいネタを考え、社内に新風を吹き込み続ける。それが社内の活性源となる。ネタによって社長自身のテンションも維持できる。

では、ネタはいつ考えるのか?

約1000年ほど前の宋の時代、中国の学者・欧さんは文章を書く時やアイデアを練る時には三上(さんじょう)でなければならないと書き残している。
三上(さんじょう)とは、「馬上(馬上)」、「枕上(ちんじょう)」、「厠上(しじょう)」の三つだ。

今日に当てはめるならば、

・馬上・・・車や新幹線、飛行機で移動中
・枕上・・・ベッドやふとんの上。眠る前、眠っている最中、寝起き。
・厠上・・・トイレの中

ということになろうか。いずれにしろ、一人になって自由になったときにアイデアがひらめくことが多いとされている。

では「がんばれ社長!」の原稿ネタを思いつくのはどこか。

それは、移動中、散歩中、使い慣れたシンクパッドを開いている時、の三つだ。ちなみに今日の原稿もタクシーで移動中にひらめいた。

他では、会議に出席していてひらめくことも結構多い。

自社の会議でも他社の会議でもよい。講演会や研修に参加しているときでも良い。なにがしかの軽い緊張感がある場所に身を置き、会話したりメモをとったりしている内に、普段思い浮かばないようなアイデアが湧き出てくる。

講演会を聞いていてつまらない講師にぶつかっても大丈夫。
アイデアに熱中すれば、貴重な時間も無駄にしないで済む。いや、むしろ定期的につまらなさそうな講演会や会合に参加するのも悪くない。

ちょっとした待ち時間も貴重だ。
応接室に通されて人を待っているとき、手帳やノートに書きものをしていて突如、アイデアがあふれ出して困ることある。どうかこのまま約束の人が遅刻してくれ、と祈る時もある。

その反対に緊張感が緩んだところではアイデアが出にくい。
私の場合は、自宅に戻ってジャケットを脱ぎ、腕時計を外した瞬間に仕事モードが終わってリラックスモードに入る。そうなると手帳すら開かなくなる。

過度の緊張や興奮もよくない。
初めて訪れたような場所では、興味関心の対象が外部に向かってしまうために良いアイデアがひらめくようなことはない。
京都まで出かけて「哲学の道」を歩いても、哲学的ひらめきはうまれない。あの道は、哲人・西田幾多郎さんにとっての慣れしたしんだ散歩道という意味であって、誰が歩いても哲学的になれるわけではない。

いずれにしても、ネタが命。
ネタを仕込む場所と時間を意図的に確保しよう。